TALK to Me — 肌が教えてくれる、わたしごと。—
第四回目のゲストは、メイクアップアーティストとして第一線で活躍するnagisaさんが登場。「UNION MAGAZINE」創刊人として出版に携わり、洗練されたファッションやライフスタイルが魅力のnagisaさんに、仕事観から美しい肌づくりのTIPSまでお話を伺いました。

ベースを整えることがすこやかな私への近道

— nagisaさんがメイクアップアーティストを志したきっかけについて教えてください。

メイクに関心を持ったのは高校生の頃でした。当時美容関係の仕事をしていたおしゃれな年上の友人がいて、その友人にメイクしてもらったのがきっかけ。「メイクって楽しい、これを仕事にできたらいいな」と気持ちが高揚して、それからは雑誌などから見様見真似で周りの友人たちにメイクをするようになりました。

— その後、メイクの学校に通いながらプロのメイクアップアーティストのアシスタントも行い、卒業したのちに渡英されたnagisaさん。滞在先にロンドンを選ばれたのはなぜですか？

当時『The Face』や『DAZED＆CONFUSED』、『i-D』など私が好きなファッション誌はイギリスのものが多かったんです。コンサバティブやクラシックというよりもアバンギャルドな要素が強い、ロンドンのファッションカルチャーが好きでした。また、海外に住んでいた人たちからパリやニューヨークなどの話も聞きましたが、一番リアルに生活を想像できたのがロンドンでした。あの頃はまだ日本から出たこともなかったけれど、パスポートを取ってから下見もせずに渡英し、住み始めました。

— 滞在中に感じたことや思い出に残っているものはありますか？

ロンドンで暮らしたことで、日本がいかに恵まれているかを改めて実感することができました。向こうでは、シャワーが弱いとか、お湯が突然止まることなんて日常茶飯事で、バスだって時間通りに来ません。仕事が前日にキャンセルになることもざらにあります。日本にいるときに当たり前に感じていたことが、世界では当たり前ではないんだという感覚が身に付きました。日常がサバイバルなので、心も強くなったと思います。

— 帰国後は『UNION MAGAZINE』を創刊、そして自身のYouTubeチャンネルの運営など、幅広く活躍されていますが、それぞれどのような想いをもって活動されているのでしょうか？

基本的に向き合う姿勢はどの仕事も変わりません。ただ、メイクの仕事は、クライアントさんからのリクエストにメイクで答えていくものですが、自分のプラットフォームを持つことで、自己表現の自由度が高くなりました。また、『UNION MAGAZINE』を始めて、メイクだけでなく撮影の準備に一から携わるようになり、よりいっそう編集者やクライアント側の視点や気持ちが理解できるようになったと感じます。結果的にメイクの仕事にも還元されてる部分も多く、改めて全てがつながっているんだなと思います。YouTubeは、コロナ禍で生まれた空き時間を活用したいと思って始めたのですが、ありがたいことに楽しみにしてくださる方が増えていって、今はその方たちのリクエストにお応えしていきたいという気持ちで行っています。

— nagisaさんがクリエイティブの現場で大切にされていることはなんですか？

どんなお仕事でもリクエストに応えるのはもちろん、さらにアップデートさせて相手に喜んでもらいたいという想いが強いです。そのためにもコミュニケーションは大切で、相手が幸せそうにしているか、どうしたらもっとハッピーになってもらえるかというのを積極的に聞くようにしています。

— ご自身のメイクを通して伝えたい想いはありますか？

短時間で手軽に自分を変身させられるものがメイクだと思っていて、同じアイテム、同じ道具を使ってもやり方ひとつで印象を変えることができることが魅力です。私の発信がよりメイクを楽しむきっかけになれたら嬉しいです。

— 忙しい日々のなかで、良質なアウトプットを行うために意識されていることはありますか？

日頃から好きなものや自分が美しいと思うものに囲まれて生活したいです。例えば、キッチン用品ひとつでも適当なものではなく、自分の好きな色や質感にこだわって美しい空間を損なわないようにしたい。自分にとって心地いいものしか極力身の回りに置きたくないんです。それはただ高いものを買えばいいというのではなくて、100円ショップでの買い物であってもそうですね。

— インプットはどのようにされていますか？

最近はなかなかできていないのですが、理想は本を読みたいと思っています。スマートフォンでたくさんの情報を得ることはできますが、どうしても偏ってしまうのでちょっとずつ本を読む時間を増やしていけたらと思っています。あとは、旅ですね。ときどき無性にサバイバルをしたくなるんです。海外って一筋縄で行かないことが多いので、そこでトラブルを回避できたり、希望通りのスケジュールが達成できると嬉しくって。また実際に身体を動かすことで心やエネルギーも循環するので、元気になれる気がします。

— TOUQUというブランド名には、価値あるものに触れることで調子を整えるという意味が込められています。nagisaさんが自身を整えるために日常で大切にされていることはありますか？

作業を始める前に全部きれいに整えるということは意識しています。整理整頓は昔から好きで、環境が整うと作業効率も上がるし、パフォーマンスも上がって心地がいいんです。それは家でも一緒で、ご飯をつくるときも、料理中に使いたい道具が洗っていなかったりするとリズムが乱れてしまうので、まずはキッチンを整えることから始めます。夜もどれだけ疲れて眠たくても、できるだけ洗い物を終えてから寝るようにしたり。できない日もあるのですが、やっぱりそういうときは疲れすぎていたりするので、自分の身体や心のサインにもなっていると思います。

— 生活のなかでオンオフはつけるタイプですか？

私はあえて時間を区切るようにしています。メールも平日の決めた時間のなかで返すようにしていて、周りの人にもそのスタンスをアピールすることで心地よいサイクルが築けてきました。自分もそうですが、仕事で関わっている人たちもできるだけ業務時間外に働かせたくないなと思っています。それは娘と過ごす時間をきちんとつくりたいという想いが根底にあるのかもしれません。結果的に心に余裕が生まれて、仕事も家庭もより向き合えるようになったと思います。

— 肌のサインはどのように日頃からチェックされていますか？

トラブルのサインには早く気づきたいので、なるべく鏡を見るようにしています。出産を経験したことによるホルモンバランスの変化やエイジングで、食生活や肌トラブルの種類が変わりました。美肌のためにスキンケアや化粧品を変えることよりも、食生活や生活習慣の見直しを重点的に。なかでも腸内環境は大切で、赤ちゃんと同じように大人も排泄物の状態によって身体や肌の状態が分かるんです。自分の腸の状態を知り、良くしていくために食生活を改善することで、肌の調子も上がります。

— メイクの仕上がりを左右するスキンケアのポイントはありますか？

瞬時により良く仕上げなくてはいけない現場の場合、身体が冷えていたら白湯を飲んでもらったり、マッサージをして血行を良くするといった準備から入念にしていきます。スキンケアも本当に重要で、毛穴の開きなどもメイクでカバーするのではなく、しっかりと保湿をするなどスキンケアで整えることで仕上がりがより美しくなります。

— 肌がすこやかで、きれいな人に共通していることはなんだと思いますか？

インナーケアをしっかりされている方が多い印象ですね。ご飯も自分に合ったものを選ぶ、合わないものを取らないとか。あとは適度な運動と日焼け対策。紫外線は毛穴開きや乾燥など肌あれの原因になりますし乾燥からくるシミ、シワ、たるみをブロックするためにもとても重要です。

— nagisaさんご自身が使う美容アイテムを選ぶときに大切にされているポイントはなんですか？

スキンケアは保湿重視です。私は水を飲むのが苦手で、意識していてもつい忘れてしまうことが多いので、外側からしっかり保湿したいという思いがあります。一般的に乾燥している時にはクリームや乳液を多くのせがちですが、それらは基本的に蓋をする役割なので、その前の化粧水をしっかりと浸透させてあげることが大切。また、均一に塗るのではなく、乾燥や毛穴といったパーツごとの悩みに合わせて塗布量を変えてあげることもポイントです。そうすることで自然な立体感が生まれて、メイクも軽やかに素肌っぽく仕上げることができます。

— お仕事柄、美容に触れる機会も多いと思いますが、自分に合うものを見つけるために大切なことはなんだと思いますか？

きっかけは流行りの成分や誰かのおすすめを参考にするとかでもいいと思います。まずは興味を持つことがすごく大事だと思うので、実際に使ってみて合わなかったら変えて、どんどん自分に合うものにチューニングしていければいいのかなと思います。また、SNSなどを通しておすすめを試してみるのであれば、その人の肌悩みと自分の肌悩みがリンクしているのかを調べておくといいですね。スキンケアの場合、敏感肌や乾燥肌といった肌質によって効果が大きく変わることがあるので、チェックしておくと失敗が少ないのかなと思います。

— TOUQU to tone の商品の中で気になるアイテムはありますか？

「ナノバブル モイスチュアローション」がいいなと思いました。とろみがあるテクスチャーがすごく好きなのと、使う前に30回振ってくださいって書いてあるんですけど、この振るっていう行為がまた気分をオンにしてくれます。本当は毎回振らなくてもいいそうですが、あえて一つのアクションとして好きな数字の分だけ振って気分をあげています。そうやってスイッチを入れることで、ケアも丁寧にできますし、ラッキーアクションのような感じで楽しく使っています。

— 最後に、これから先どんな肌で、どのように歳を重ねていきたいですか？

私がなりたいのは娘の肌です。赤ちゃんの毛穴レスで油がなく、しっとりでもないサラサラの肌が本当に羨ましくって。彼女の肌を目指して日々ケアをしたいと思っています。個人としては、よりすこやかでいるためにリラックスできる時間をつくりたい。でも、どんどんやりたいことが溢れてくるので実際はすごく難しいんです。そうやって前のめりで負荷をかけながら成長していきたい自分も確かにいて。スタイルとしてエッセンシャルを掲げながらも、なかなか具現化できていない部分もあるので、上手にバランスをとっていけたらいいですよね。

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【Profile】
nagisa（なぎさ）
独立後、渡英。ロンドンを拠点に活動を開始。帰国後は、雑誌や広告などを中心にさまざまな分野で活躍。メイクアップアーティストとしての活動にとどまらず、「UNION MAGAZINE」創刊人として出版に携わり、国内外のアーティストと共に雑誌を制作、グローバルに活動中。自身のYouTubeチャンネル「nagisa TV+」では、メイクやファッション、ライフスタイル情報を発信中。

instagram：@nagisamakeup
YouTube：nagisa TV＋

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【Staff credit】
Photograph: Yu Inohara
Interview&text: Mikiko Ichitani